山田亮一とグリーンカレーと音楽を勧めること
山田亮一とグリーンカレーはとても似ている
グリーンカレーを人に勧めるのは難しい。それと同じぐらい山田亮一(の音楽)を人に勧めるのは難しい。いい機会であるから、常日頃感じていた音楽を勧める行為の難しさを食べ物に例えてみよう。
僕はグリーンカレー(山田亮一)が大好きである。グリーンカレーのCDも何枚か持っているし、朝晩必ずグリーンカレーを食べ、電車に乗るときもイヤホンから流れるグリーンカレーを食べている。ツイッターでグリーンカレーのことを呟き、グリーンカレー関係のフォロワーから一つか二つ星をもらうこともある。
そんなグリーンカレージャンキーな僕は、グリーンカレーを人に勧めることはめったにしない。生半可な気持ちで聴いてほしくない、勧めたからには三食グリーンカレーを食べてほしいという思いが、布教に念入りな準備と時間を必要としまうからだ。それに勧めるのが単純に苦手。
そもそも、グリーンカレー(山田亮一)という食材は扱いにくい。香辛料たっぷりでスパイシーな所は、白米に塩鮭系の音楽が関の山の一般人や、とろとろゆるふわオムライスガールや、ラーメンや唐揚げが好きな普通男子高校生にとっては受け入れがたいものだ。インド料理屋に連れて行った帰りに、「あのお金でピザポテト食べたかったわ!」と言われてしまえば目も当てられない。おいしいもんな、ピザポテト。
僕は唐揚げも大好きなので、それが好きな人とはそちらに話を合わせ、軽率にレモンをかけたりしない。そういったコミュニケーションのなかに突然グリーンカレー入りのグレイビーボートを投げ込んだりするのはインド人として恥ずかしい行為だと感じている。だから、脂っこいものが嫌いな人に唐揚げを押し付ける人や、イスラム教徒に「とんかつが食べられないなんて頭おかしい」と言う人には軽蔑を鳴らす。もし昆虫を食べる人たちを見かければ、「物は試し!」と虫をむしゃつく器量を常に持っていたいとも思う。
スパイスで染め上げる欲望を隠しながら日常に生きる私は、グリーンカレー(山田亮一)を勧めたいという気持ちを常に沸々と沸かしている。そんなグリーンカレー教徒も少なからず多くいるだろう。そこで最後にとっておきの布教方法をお教えしよう。
狙うべきは香辛料に耐性のありそうな人だ。ベトナム料理やタイ料理が好きな人、無印のカレーを好んでよく食べている人なんかがベスト。ナンを焼く(歌詞カードをコピーする)などの念入りな準備を整えた後、あなたは彼女を部屋に招き、ねっとりした口調で言うのだ。
「ハヌマーン(हनुमान)聴いてみない?」と。
あなたの口の香辛料臭さに相手が戸惑ってる間にあなたは「World's System Kitchen(バターチキンカレー)」をすっと差し出す。「おいしいね!」の一言が出る前に「RE DISTORTION(マトンカレー)」を!さらに「THE BUZZMOTHERS(パンジャビキーマカレー)」を!「Disc Harrassment(プーパッポンカレー)」を!
次々と繰り出される山田亮一(グリーンカレー)の唄と言葉に、狂ったように歪み鳴く一方で恥ずかしいほど率直なギターとそれに寄り添うように重なるバンドサウンドに、孤独を孕んだ思想を唄う青年と胡散臭く笑う哀愁漂うニヒル顔とアフロに、もう彼女は夢中さ。
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